再認識した市民とすすめるごみ減量運動の重要性

『議会と自治体』(2002年4月号)に私の論文が掲載されました.ここに転載いたします.

 現在、佐野市では、新焼却施設建設が地元地域住民との合意が得られないまま暗礁に乗り上げています。現在の処理施設は、1日16時間の稼動でごみ60トンが処理できる焼却炉(ストーカー方式)を2基(計120トン)備えています。しかし、ごみが増えつづけるなかで、92年からは24時間稼働でごみ処理をおこなってきました。現在の市内のごみ排出量は、1日約100トンとなっています。(表)

 市では、98年から一般家庭ごみを6種11分別収集にし、ごみ減量をすすめてきました。2001年からは、紙パックと白色食品トレイを追加し、6種13分別をおこなっています。

 しかし、その一方で、市内の田之入町にある現在のごみ処理施設では、栃木県がおこなったダイオキシンの土壌検査で490ピコグラムが検出され、行政の管理のずさんさとも相まって、焼却場を抱える周辺住民の不安と怒りを増大させました。この施設は、ダイオキシン類排出規制が強化される今年12月からは、基準を満たせずいまのままでは、稼働できない事態となっています。

表 佐野市のごみ排出量の推移
総ごみ排出量(トン) 資源化率  
1991年 29,865 4.9% 3種5分別
1992年 30,325 5.8%
1993年 31,134 4.9%
1994年 34,340 4.6%
1995年 35,026 3.8%
1996年 34,827 3.4%
1997年 35,778 4.4%
1998年 32,916 8.8% 6種11分別
1999年 33,742 7.9%
2000年 33,890 7.8%

 こうしたなかで、新炉の建設が緊急の課題となっているのですが、その立地、すすめ方などをめぐり、市の姿勢が大きく問われています。

住民合意が得られないごみ処理施設計画

 そもそも、この間、新施設建設の対応が遅れた原因の一つは、前市長が国や県のいいなりに、宇都宮市清原地区に建設が予定されていた広域のRDF化処理施設に期待していたことにあります。しかし、この施設は、住民らの反対運動が起こり、建設にいたりませんでした。

 その後、市は、施設の機種のみを選考する機種選考委員会を設け、新機種は流動床型熱分解ガス化溶融方式を取り入れることを決定し、24時間連続運転の焼却炉を2基建設(計150トン)するという計画を発表しました。

 市は、建設地として、当初、田之入町を予定していましたが、地元の了承かえられず断念し、今度は赤見地区・吾妻地区を候補地としました。この両地区では、市と地権者など一部の関係者間のみで施設建設を決定しようとしましたが、結果的に両地区の地元で大反対運動が起き、合意にいたりませんでした。

 市議会のなかでも、これらの問題が焦点となり、議論がおこなわれました。日本共産党市議団(2人)は、議会のたぴにこの問題を取り上げ、市当局の住民を無視したやり方を批判し、すべての情報を公開して住民の立場に立った方向へ転換するよう、追ってきました。

 党市議団は、ごみ問題は全市民の課題として、以下のような基本方向を提案しました。

・ごみの減量化をすすめることこそもっとも大切です。

・そのうえで、必要な施設建設を住民合意のもと無駄なくおこなうために大事なことは、

1.事業をすすめるうえで、田之入町や赤見.・吾妻地域での誤り老繰り返さない。

2.ごみ処理事業についての情報をすべて公開すること・・情報を共有することなしには、当局と市民の信頼関係と共通理解を築くことはできません。

3.どこに建設する場合でも住民合意を前提にし、地域の安全対策と生活環境整備に力をつくすこと。

4.真の意味での住民参加のごみ処理施設建設検討委員会を設置し、市内全域から市民の代表の参加と、公募による委員も広く募ること。

「百人委員会」は発足したが……

 こうしたなかで、市民の関心も高まり、ごみ問題が議会で議諭されるようになると、議会の傍聴席に入れなくなるくらいになったこともありあます.もっとも多いときには100人を超える傍聴者が役所のロビーのケーブルテレビ(生中継)にかじりつくといった光景もあり、マスコミも大きく取り上げるようになりました。

 2001年8月末には、現職の市長が急死し、市長選が3人でたたかわれ、焼却場建設問題も大きな争点となりました。日本共産党は15の民主団体と共闘し、「みんなで市民の市長をつくる会」(以下「市民の会」)の一員として藤掛久夫さんを擁立し奮闘しました。

 「市民の会」の政策は、焼却場建設が暗礁に乗り上げた一番の原因として、行政が情報公開せずに住民に一方的に押しつけたことであると批判し、『市民が一緒になってごみの総量抑制や建設問題にとりくむことで解決できる』、と訴えました。また市政と市民の信頼関係を築くことなしには解決しないという方向を提案しました。藤掛さんの当選にはいたりませんでしたが、「市民の会」の政策に多くの市民が共感してくれました。

 選挙の結果、元社会党県議の飯塚氏が当選しましたが、こうした選挙戦を受けて、新市長は、焼却施設建設について市民の意見を出し合うための、公募による「百人委員会」をつくりました。百人委員会には、ごみ問題に関心のある市民206人の応募があり、その全員が委嘱され、答申をおこなうこととなりました。

 しかし、ごみ減量をはじめ、さまざまな意見が出ていたにもかかわらず、市からこの百人委員会に付託さ.れた諮問内容は、

1.新機種の安全性の検証について、

2.稼働している先進地域の視察、

3.受け入れ地域の地域振興策について、

の3点という限定されたもので、委員をはじめ、ごみ問題の解決を真剣に考える市民のなかから、この諮問の内容について疑問と不満が噴出しました。

党主催の「つどい」を開催

 こういった状況のなかで、日本共産党佐野市委員会は、「百人委員会」に参加している党員とも協力して、「ごみの問題を考えるつどい」を企画し、広く市民に参加を訴えました。市長をはじめ、市職員や全議員、百人委員会の委員の方がたにも参加を呼びかけました。当日は、岩佐恵美参議院議員・参院環境委員が講演をおこない、100人近くの参加で会場は熱気をおびたものになりました。

 私が岩佐さんの講演を聞くなかで、気づかされたことは、それまで、排出されるごみをどう処理するかということだけに目が向いていて、ごみ問題の本質を正面に据えていなかったことです。

 ごみ処理問題の基本は、一つは発生源から抑制していくことですが、排出される廃棄物の中身をよく知り分析し、行政と市民が共通の認識に立って、どのように減量化をすすめたらいいのか、どのような方向で互いに努力をしたらいいのかということを、ともに考えていくことがとても大切だと気づきました。

 ごみ問題は住民との共同が要であり、行政が決めて市民に押しつけるというトップダウン方式では、けっして解決にむかわないことを、岩佐さんは「民主主義の問題である」と強調しました。

 ダイオキシンの発生原因の塩ビやプラスチックなどを徹底して分別し焼却しないこと、それにはどのような方策があるかを探っていくこと、国や企業に責任を求めると同時に、自治体段階でもどんな努力ができるのか市民とともに考え実践していくこと。これらのことは、当面焼却に頼らなければならない状況の中で、ダイオキシンを少しでも抑えるために大切なことではないでしょうか。

行政と市民が一体となったごみ問題の解決にむけて

 ごみの排出量を見ると、分別収集を始めた時期.(98年)には、ごみの総量が減少しています。2001年から6種13分別にしたときもふたたび総量が減っています。これは、行政と市民が一体となった努力の成果です。しかし、翌々年からは微増となっているのも事実です。一方で、佐野市の資源化率は、金国平均11%にたいして7.8%(2000年)と、まだまだ低い水準です。

 また、ごみ問題を契機として、市内各団体・グループで、減量化や資源化を目的とする講演会や講習会が開かれるようになりました。

 このような減量運動がすすめられるなかで、佐野市は最近の広報で、12月から他の地域にごみ処理を委託しなければならないため、市の財政負担が大きく増え、持ちこたえられなくなるとして、「ゴミ非常事態宣言」を出しました。

 財政困難にならないようごみ処理委託料を減らすために、「ゴミ減量化30作戦」(ごみを30%減らすこと)にとりくむことになりました。また、30%減量が達成されない場合には、ごみの有料収集も検討しなければならない、という見解もしめしています。

 有料化ではごみ問題の解決にならないことは、各地の例を見てもあきらかです。ごみ減量は、全国的にも大きな運動になってきています。

 大型化してきた焼却施設の大幅な見直しが必要です。講演会でも、地域の大きさに見合った施設建設が大切だと強調されていました。政府の政策のもとで、プラントメーカーに独占的に発注されるごみ処理施設建設の公共事業には、市民の監視が不可欠です。また、住民のいのちや健康をまもる立場からも、大型施設で多額の税金をつぎ込むより、住民参加で解決していく方向に行政を変えさせなければなりません。

 市民一人ひとりのごみ減量の努力とともに、企業が責任を消費者に押しつけることではなく、最終処理まで製造者が責任を持っておこなうというルールを確立することが求められています。

 佐野市では、資源化率向上をさらにすすめ、行政と市民が一体となった減量運動をすすめることが、これ以上の環境破壊を許さないためにも必要です。

 日本共産党市議団も市民とともに、よりよいごみ処理の方向を見いだしていくために、いっそう努力していきたいと思います。

『岡村恵子のホームページ』編集責任者および著作権:日本共産党佐野市委員会,佐野市議 岡村 恵子
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